大山総裁の指導
 大山倍達総裁は、基本稽古や型稽古の際に、「一つの型は三千回、一つの技は十万回、蹴りは一日千回やれ!一つの技を百万回やったら自分のものになる」と数を明確に出して指導していた。

 もう一つ大山総裁が強調したのは、「どんなことでも手を抜くな!必死になってやれ!」ということだった。これは大石師範の経験上、非常に大切なことだと考えている。
「武道をやって一番陥ってしまう落とし穴は、覚えた後に『手を抜く』ということです。動作を覚えたことによって手を抜いてしまうのです。それが一番怖いんです。『俺には10の力があるんだけど、今日は初心者ばかりだから、半分の力でやればいい。いざとなったらすぐ10の力でやればいいんだから』といつも半分の力でやっていると、知らない間にその半分の力が自分の本当の力になってしまいます。これで大体ダメになってしまいます。」(大石師範)
 こういう事態に陥らないためには、10の力を持ったら、さらに20、30の力を出せるよう稽古を続ける、それに慣れればその20、30の力が自分の本当の力になる。そしてまた一つ上を目指していく。「腕立て伏せと同じです。最初は10回やるだけでもキツイですけど、慣れれば次は30回をやる。30回ができるようになった頃には、10回は自分の力でできる範囲内になっています。そのキツイ30回もやっている内に当たり前になってくる。そうなれば30回が自分の力になってい く。普段の稽古も一緒で、10の力しか無くても必死になって20、30の力を出すように努めていれば、20、30が自分の力になるものです。そうなったらまた上を目指せばいいのです」(大石師範)
 大石師範にもそういう経験があったという。しかしある時「ハッ」として「これではいけない」と稽古態度を改めた。それ以来、どんな時でもできる限り自分の力を出し切るように稽古しているという。それは基本や組手に限らない。型を行なう時も現在の自分の力を出し切るよう努めている。
「覚えたがためにダメになってしまった人間がけっこういます。動作を覚えたら手を抜くことも覚えてしまって、手を抜いた状態が自然に自分の力になってしまった。才能があったのにダメになってしまった人間もいました。『手を抜く』『力を抜く』ということははっきり言って死んだ時間を自分で作り出しているわけです。どんな場合でも総裁は全力で手を抜くことはありませんでした」(大石師範)

フルコンタクトカラテ(2005年12月号)より















































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